最近、テレビCMや広告などで「電子帳簿保存法」という言葉をよく見るようになりました。なんとなく「帳票類が電子保存できるのか」と思いがちですが、じつは様々な取り決めがあります。その中でもわかりにくいのがFAXの取り扱い。
ひとことで「FAX」といえども、紙で出力される今までのFAXだけでなく、複合機に保存されるペーパーレスFAX、インターネットFAX(クラウドFAX)など紙を使わないFAXも現在では一般的なものとなっています。このコラムでは、FAXで受信した帳票は、どのような処理をすれば「電子帳簿保存法」に対応できるのかを解説いたします。
※本内容は2022年改正内容をもとに解説しています
目次
「電子帳簿保存法」とは?
「電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)」は、従来所得税法、法人税法、消費税法等に規定されている帳簿書類を納税地において書面(紙)で保存することが義務づけられていたものを、一定の要件のもと電磁的記録等による保存を認めるというものです。つまり、今まで紙の保存が必須であった帳票類を、データで保存できるようにした法律とも言えます。
1998年に「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成10年法律第25号)」として施行され、数回の改正が行われています。
FAXは電子帳簿保存法への対応が必要か
国税庁の「「電子帳簿保存法に取り扱い通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」によると、FAXの取り扱いは以下のように定められています。
引用元:「電子帳簿保存法取扱通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/kaiseir030628/
(ファクシミリの取扱いについて) |
また、国税庁の「一問一答」にもこのような記述があります。
問3 当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存しておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか。 |
こちらの質問には、以下の回答がでています。
【回答】 (6)(7)については、一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えますので、受領したデータに規則第8条第1項第1号のタイムスタンプの付与が行われていない場合には、受領者側でタイムスタンプを付与すること又は同項第4号に定める事務処理規程に基づき、適切にデータを管理することが必要です。 |
非常にややこしい書き方ですが、要約すると以下のようになります。下記のポイントを抑え、現在の運用方法を確認してみましょう。
① 紙で出力する従来のFAXは、従来どおり書面(紙)で保存できる
② 複合機など、送受信したデータを保存する形式のFAXは、電子取引とみなす
インターネットFAX(クラウドFAX)でやり取りした帳票は電子取引として扱う
インターネットFAX(クラウドFAX)は送受信にデータを用い、出力せずに扱うサービスであることから、複合機でやりとりするFAXと同様先述の②に該当します。
図にするとこのような分類になります。厳密に言えば紙出力された帳票も「スキャナ保存」という方法で電子保存は可能です。
インターネットFAX(クラウドFAX)で受信した帳票の電子帳簿保存法への対応
インターネットFAX(クラウドFAX)で受信した帳票は、電子帳簿保存法の対象であることがわかりました。では、どのようにすれば適法に、適切に保管できるのかを解説します。
インターネットFAXで受信した帳票の法解釈
インターネットFAX(クラウドFAX)で受信した帳票は従来の紙に出力されるFAXのように、印刷して紙で保管することは認められていません。ゆえに必ず電子保管が必要になります。
一般社団法人ビジネス機会・情報システム産業協会によると、ペーパーレスFAXで受信した帳票の保管方法は以下のように解説されています。
●ペーパーレスファクス機能を持つ複合機等を利用した取引に関する情報について |
まとめ
インターネットFAX(クラウドFAX)で受信した帳票の電子帳簿保存法に適した形での保存方法ですが、要点をまとめると以下のようになります。
・インターネットFAXで受信した帳票は紙保管ができず、電子保管が必須
・対象の帳票にタイムスタンプを付与する必要がある
・対象の帳票に取引情報を付与する必要がある
・対象の帳票が検索できる環境を準備する必要がある
2023年12月の猶予期間終了まであと少し。業務の電子化において、見落とされがちなFAX帳票の処理・保管にも改善が求められています。現在インターネットFAX上にそのまま保管している、ダウンロードして保管している、メールに転送したままになっているなど、電子帳簿保存法に対応していない保管方法を行っている企業様は、一度現在の業務を見直してみてはいかがでしょうか。また、当社では電子帳簿保存法に対応した保管が可能なサービスとの連携もご提案できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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