生活環境や仕事のデジタル化が進んでいるなか、国内では日本独特の押印文化や紙文化が足かせになり、海外に比べて遅れていると言われています。しかし、2019年にデジタルファースト法が施行。昨年(2021年)にはデジタル庁が発足。本格的にDX時代へと突入してきています。そんな中、ここ数年注目されているのが「クラウドFAX(クラウドFAXサービス)」。この記事では、紙で情報をやり取りするFAXがどのようにすればデジタル化できるのか、それによりどのような利点があるかをご紹介します。
目次
クラウドFAXサービスとは
そもそも「クラウドFAX」とはどのようなサービスなのでしょうか。その特徴を解説します。
機器を使わず、クラウド上で利用するWebサービス
通常のFAXは、複合機やFAXサーバーなどに電話回線を接続し、送信先の電話番号あてに電話をかけ、画像を送信する仕組みです。「クラウドFAX」はその仕組みをインターネット上で行うサービスです。送受信されたデータはクラウド上に保存され、パソコンやスマートフォンなどインターネットに接続できる端末があれば利用できます。
FAX専用の番号で送受信を行う
一般的なクラウドFAXサービスは、利用者専用のIPFAX番号を発行し、FAXの送受信環境を提供しています。この番号はFAX専用のものであり、電話の発信・着信、ショートメッセージの送信には利用できません。
システムと連携させることができる
FAXの通信はTIF形式で行いますが、多くのクラウドFAXサービスは、送信や閲覧、ダウンロードがPDF形式で行えます。そのことにより、送受信したファイルをAPIで連携し自社のシステムに取り込む、OCRでテキスト化するなどの処理がシームレスに行えます。
クラウドFAXサービスのメリット
そんなクラウドFAXサービスには、さまざまなメリットがあります。
FAXのやりとりが確実にできる
クラウドFAXサービスは、業務のペーパーレス化に非常に役立ちます。今までパソコンで作成した書類を印刷し、FAX機から送信していた際に発生していた文字のかすれや、紙面のゆがみなどがなくなります。また、受信する際にもFAX機の不調やトナー切れ、紙切れの心配がなくなるなど、FAXを使った情報のやり取りが確実にできます。
機材の購入なしに利用できる
前述の通り、クラウドFAXは、インターネット上でFAXの送受信をするサービスです。そのため今までのように自社でFAXサーバーやFAX専用機の購入や電話回線の契約、導入後のメンテナンスなどの費用が必要なく、他のWebサービス同様に基本料金や利用量に応じた従量料金のみで利用できます。
業務がデジタル化され効率が上がる
クラウドFAXの利用は、業務効率の向上に役立ちます。クラウドFAXは送信先から送られてきた紙面をPDFやTIFの画像形式で受信するため、OCRやRPAなどの相性が非常によく、今まで紙で受信し、回覧、処理をするという業務がパソコン上でシームレスに行えるようになります。その結果、今まで紙で行っていた業務の効率化が見込めます。
運用を始めるまでの期間を短縮できる
FAXの環境を導入するためには、通常機材の準備から回線契約、納品まで1ヶ月~2ヶ月かかることはざらで、企画段階から数えるとそれ以上になると思います。しかし、クラウドFAXサービスは、サービス提供会社と契約するだけで完了。FAX環境が必要になったその日から使うことができ、課題解決がスピーディーに行えます。
BCP対策になる
自社でFAXの環境を整備する場合、システムの二重化や冗長化、バックアップ、管理者の配置など、さまざまなBCP対策が必須です。しかし、クラウドFAXサービスは、サービス提供側が設備の保守や運用を担うため、自社で対応する必要はありません。
テレワークなどにも対応できる
昨今のリモートワークやテレワークの課題のひとつに、FAXの確認・対応のために出社しなければならないというものがあります。あるアンケートでは、約70%の方が「FAXの対応のために出社した経験がある」と回答。事務所に届くから見てもらいやすいというFAXの特長が、今では業務の負担になっています。そこで事務所宛のFAXをクラウドFAXサービスに変えれば確認のための出社はなくなり、自宅や外出先からでもインターネット環境があれば受信や送信、返信ができる環境が整います。
クラウドFAXサービスのデメリット
これだけ便利なクラウドFAXサービスですが、もちろんデメリットもあります。
インターネット環境がないと使えない
クラウドFAXサービスは原則「インターネット環境上でFAXをやりとりするサービス」です。ゆえに、インターネットに接続できない環境では使うことができません。また、クラウド上でデータをやり取りすることになるため、リモートワークやテレワークの環境で利用するためには、セキュリティを整える必要があります。
電話番号が変わる可能性がある
多くのクラウドFAXサービスは、利用する際ユーザー固有のFAX番号を発行し、使用するものとなっていて、今まで使っていた事務所の電話番号は使えません。そのため受信で利用する際には顧客へ事前に新しい番号を通知する必要があります。また、通知しても過去の番号へ送ってくる人はすぐには0にならないため、いままでの番号を併用して使う期間が発生します。この課題はいままで使っていた電話番号にFAXが届いた際に、クラウドFAX番号へ転送させる設定を使えば周知の手間ははぶけますが、契約会社によって転送できない、できても転送料金がかかることがありますので事前に注意しましょう。
送信するファイルを電子化する必要がある
クラウドFAXサービスは、パソコン上のファイルを指定のFAX番号に送るサービスです。ゆえに、紙で回覧、押印、処理している書類を送るためには、スキャナやカメラなどで電子化する必要があります。そのため、クラウドFAXだけを導入しても業務が効率化しないということも起こりえます。改善したい業務を分析し、ワークフローや電子署名、OCRなどと組み合わせて活用することをおすすめします。
受信を見逃してしまう可能性がある
通常のFAXは受信すると自動的に印刷、出力されます。しかし、クラウドFAXサービスはFAXの状況をサービスにログインして確認するため、受信を見逃してしまう可能性があります。しかし、多くのクラウドFAXサービスには、この見逃しを防止するためにFAXを受信したと同時に指定したメールアドレス宛に着信通知を送信する「メール通知機能」が使えます。この機能により、通常のFAXと変わらない運用が可能になります。
クラウドFAXサービスの検討ポイント
メリットとデメリットを解説したところで、クラウドFAXサービスの検討ポイントについてご紹介します 以下のポイントを確認して自社の業務にあったサービスを選ぶようにしましょう。
業務に必要な機能が備わっているか
FAXを扱う業務には、押印や加筆・返信する、基幹システムと連携して処理しOCRでテキスト化する、同じ内容のFAXを大量に送信するなど、多種多様です。クラウドFAXサービスにはこのような業務に対応できる機能がありますが、サービス提供会社によって違います。まずは自社の業務の洗い出しを行い、必要な機能が備わっているものを選ぶようにしましょう。
料金体系
通常のFAXとは違い多くのクラウドFAXサービスは、毎月かかる固定料金(月額基本料金)と、送信・受信した数量に応じた従量料金がかかります。送信費用だけでなく、サービスの利用料金全体を考え、選ぶようにしましょう。
対応デバイス
クラウドFAXサービスは社内だけでなく、テレワーク環境や外出先でも利用できます。外出先で利用する場合、パソコンではなくスマートフォンで利用できると非常に便利です。検討しているサービスが、スマートフォンのアプリ・Webアプリに対応しているかを確認しておきましょう。また、先述の「メール通知機能」を使うのもおすすめです。
操作方法・運用方法
操作方法や運用方法はとても重要です。せっかくFAXをクラウド化し、ペーパーレス化を達成しても使いにくければ意味がありませんし、業務の効率化は達成できません。検討しているサービスが操作する人のリテラシーや業務の運用に合っているか事前に確認しておきましょう。
セキュリティ・サポート体制
クラウドFAXサービスは、契約したサービス提供会社の設備を利用するので、利用先のセキュリティ体制は非常に重要です。プライバシーマーク(個人情報の保護体制に対する第三者認証制度)や ISO/IEC27001 (情報セキュリティマネジメントシステム)認証の取得などは、選定の際に確認すべきポイントです。また、トラブルが発生した際のサポート体制についても確認しておきましょう。
契約期間
クラウドFAXサービスは、利用しない月にも月額基本料金がかかります。FAXの利用頻度や利用量が少ない場合は、事前に最低契約期間を確認しておかないと、今までより高くなってしまうこともあります。サービス提供会社によっては契約初月の基本料金が無料になっているが、そのまま解約しなければ自動的に課金されるものもありますので、事前に確認していくことは重要です。
まとめ
テレワークやリモートワークを中心とした「新しい働き方」に対応するためには業務のデジタル化は必須。しかし日本文化に根付いているFAXを今すぐなくすのは非常に難しいこと。FAXの送信・受信のペーパーレス化が取引先の環境を変えずに実現できるクラウドFAXサービスは、これからますます広がっていくと考えます。FAX環境のリプレイスや商取引の電子化を考えている方は、一度検討してみてはいかがでしょうか。
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