電子帳簿保存法は、情報化社会に対応し、国税関係帳簿書類の保存に関する負担を軽減するため、一定の要件の下で国税関係帳簿書類の電子データによる保存が認められています。
そして、電子帳簿保存法は保存要件が「電子帳簿等保存」、「スキャナ保存」、「電子取引データの保存」の3つに区分されています。
本コラムでは区分ごとの保存要件を解説していきます。
電子帳簿保存法の対象となる書類・データについて
まず、電子帳簿保存法の要件を解説する前に、電子帳簿保存法の対象となる帳簿や書類がどのようなものか、表で解説いたします。
各帳簿、書類がどの保存要件に該当するのか見ていきましょう。
電子帳簿保存法の対象となる書類・データのイメージ図
電子帳簿等保存(希望者のみ対応)
国税関係帳簿や国税関係書類は原則として紙保存となりますが、「電子帳簿等保存」は、
最初の記録段階から一貫してパソコンを使用して作成しているかというのがポイントで、
そのように作成した国税関係帳簿や国税関係書類を電子データで保存することができるよう定めたものです。
パソコンで作成したデータを保存する方法を、電磁的記録での保存といいます。
国税関係帳簿については、2022年1月から「優良な電子帳簿」と「その他(一般の電子帳簿)」の2種類になりました。
その他を満たしていれば帳簿の電子保存が可能です。
なお、電子帳簿等保存の対応は任意となっています。
DVDやハードディスクのようなメディアでの保管だけではなく、クラウドサービスを利用してサーバーに保管したデータも対象になります。
・「優良な電子帳簿」のメリット
「優良な電子帳簿」の対応をすることでメリットがあります。
例えば、会計ソフトを利用して国税関係帳簿や書類を作成する際、
訂正や削除の履歴が残る機能も活用して作成した帳簿であれば、
税務調査で誤りが見つかっても、過少申告加算税の割合が5%軽減されます。
また、個人事業主の場合は、最大55万円の青色申告控除の要件をすべて満たした上で、
e-Taxによる電子申告もしくは、優良な電子帳簿の保存の対応をするなど
一定の要件を満たすことで、最大65万円の青色申告特別控除を受けることもできます。
スキャナ保存(希望者のみ対応)
「スキャナ保存」とは、取引で発生する領収書や請求書などの紙の書類をスキャンして、電子データ化して保存することです。
こちらも電子帳簿等保存の対応と同様で任意となっています。
スキャナ保存の対象となる書類は、取引相手から紙で受け取った書類や自社で作成して取引相手に紙で渡す書類の写しになります。
契約書、請求書、領収書、見積書、注文書、納品書、検収書など決算関係書類を除く国税関係書類がそれに該当します。
また、それらの書類は、重要性によって「重要書類」と「一般書類」の2つに分類されます。
重要書類は資金や物の流れに直結・連動する書類で、一般書類は資金や物の流れに直結・連動しない書類とされています。
・スキャナ保存の重要書類と一般書類
また、書類を読み取る際には、スキャナ保存期間の制限、解像度やカラーなど様々な基準が設けられています。
詳細は国税庁のパンフレットをご参照ください。
・「スキャナ保存」のメリット
スキャナ保存を始めるための特別な手続きは原則必要なく、実施したことによる特例などもありません。ですが、対応することで主に下記のような社内的なメリットがあります。
(※スキャナ保存を始めた日より前に作成・受領した重要書類(過去分重要書類)をスキャナ保存する場合は、あらかじめ税務署に届出書を提出する必要があります。)
• 読み取った後の紙の書類を廃棄できるため、紙の書類の保存作業やスペースが不要になる。
• 紙で受け取った領収書などをスマホで読み取って経理担当に送れば、書類の受け渡しから保存までをスキャナデータのみで対応でき、社内のテレワーク化がしやすくなる。
「電子取引データの保存」(法人・個人事業者は対応が必要)
電子取引データの保存は、申告所得税や法人税に関して帳簿・書類を保存する義務のある方が、
契約書、領収書、見積書、請求書などに相当する電子データをやりとりした場合、その電子取引データを保存しなければならないと定めたものです。
電子取引データの保存は、「電子帳簿等保存」や「スキャナ保存」と違い、法人・個人事業主に関わらず、要件に該当する方は対応が義務となっています。
また、保存の際は改ざん防止のための措置をとり、「日付・金額・取引先」で
書類の検索ができるようにするなど、「真実性」と「可視性」を確保しなければなりません。
そして、受け取った場合だけでなく、送った場合にも保存する必要があります。
ただし、対象となるものはあくまでデータでやりとりしたものであり、紙でやりとりしたものをデータ化しなければならない訳ではありません。
電子取引データの保存要件
2024年1月からの電子帳簿保存法改正による変更点
2023年度税制改正により、電子帳簿保存法もいくつか見直しがされました。
2024年1月1日以後に見直し対象となった点を解説していきます。
電子帳簿等保存の改正点
税制改正により、「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の対象となる帳簿の範囲が見直されました。
「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」とは、優良な電子帳簿の要件を満たし、
電磁的記録による備付け及び保存をしていれば、後から対象の電子帳簿に関連する過少申告が判明しても過少申告加算税が5%軽減されるという措置です。
ただし、あらかじめ届出書を提出しておく必要があります。
この措置の対象となる帳簿の範囲は、改正前は仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な帳簿(全ての⻘⾊関係帳簿)となっていましたが、
その他必要な帳簿が一部の帳簿に限定されました。詳細は国税庁のパンフレットをご参照ください。
その他必要な帳簿の記載事項イメージ図(参考:国税庁)
スキャナ保存の改正点
① 解像度・階調・大きさに関する情報の保存が不要
スキャナで読み取る際に守らなければならない解像度(200dpi以上)や階調(原則としてカラー画像)などの要件自体に変更はありませんが、
国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度・階調・大きさに関する情報の保存を必要とする要件が廃止されました。
② 入力者等情報の確認要件が不要
スキャナ保存時に記録事項の入力を⾏う方、または入力作業を行う方を直接監督する方に関する情報を
確認できるようにしておくことを求める要件が廃止されました(電子取引データ保存についても同様)。
③ 帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が重要書類に限定
スキャナで読み取った際に、帳簿と相互にその関連性を確認できるようにしておく必要がある国税関係書類が、
「重要書類(契約書、納品書、請求書、領収書など、資金や物の流れに直結・連動する書類)」に限定されました。
この見直しにより、「一般書類(見積書、注文書、検収書など、資金や物の流れに直結・連動しない書類)」をスキャナ保存する場合については、相互関連性の確保が不要となりました。
スキャナ保存を行うためのルールは、スキャナ保存の保存要件を解説している箇所で、表でご確認頂けます。
電子取引データ保存の改正点
① 検索機能の全てを不要とする措置の対象者の見直し
税務調査等の際、調査担当者に電子取引データのコピーを求められても対応できるようにしている場合(ダウンロードの求め)、
検索機能の全てを不要とする措置について、対象者が見直されました。
1,検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」の保存義務者から「5,000万円以下」の保存義務者に拡大。
2,対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加。
②2022年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(2023年12月31日)をもって廃止
※ 2023年12月31日までにやり取りした電子取引データを「宥恕措置」を適用して保存している方は、2024年1月1日以後も保存期間が満了するまで、
そのプリントアウトした書面を保存し続け、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば問題ありません。
③新たな猶予措置を整備
下記の要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防止や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、
電子取引データを単に保存しておくことができるようになりました。
1,保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
2,税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合、
注意点として2023年12月31日に廃止された宥恕措置では、電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じる必要はありませんでしたが、
新たな猶予措置が整備されたことで、プリントアウトした書面の提示・提出の求めに加え、電子取引データについても「ダウンロードの求め」にも応じる必要があります。
まとめ
2024年1月からの電子帳簿保存法改正により、デジタル化を進めていく上でのメリットはあるものの、
対応を進めるのは楽なことではありませんし、電子帳簿保存法の要件を正しく理解し運用していくのは大変なことだと思います。
任意となっているものに関しては徐々に進めているという企業様もいるのではないでしょうか。
国税庁のHPにはシステム費⽤等をかけずに対応する方法などもまとめられています。
そういったものを参考にしつつ対応を進め、それでもやはりシステムを導入した方が対応しやすいとなった場合は、
弊社でも電子帳簿保存法に対応したサービスを取り扱っております。
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