紙の帳票類やFAXなどに書かれた情報を手作業でデータ化するには、当然ながら時間やコストがかかってしまいます。中でもデータ化するにあたっての課題が、手書き文字の存在。そんな手書き文字のデータ化や効率アップに有効な手段のひとつとして、AI OCRが挙げられます。
この記事では、手書き文字が認識でき、紙帳票のデータ化に便利なAI OCRについて、その特長や注意点、選び方のポイントについて解説していきます。
紙帳票のデータ化が必要とされる理由
まず初めに、紙帳票のデータ化が必要とされる理由について説明していきます。
時間や人員などのコスト削減
データ入力を手作業で行う場合、①書かれた文字を目視で確認②入力作業③入力された内容のチェック、といった工程が発生します。この作業には当然ながら業務量分の人員が必要となり、作業量によっては多くの時間、コストが発生してしまいます。
整理や保管に課題がある
紙の帳票やFAXは、データ入力後も保管をしておく必要があります。しかし、紙での保管は量が増えるにつれ場所の確保や検索の効率などに課題があります。さらに、業務のデジタル化、ペーパーレス化による業務効率化や法律の改正などにより、今まで紙で保管していた帳票類もデータ化する必要が出てきています。
データ化の壁となりがちな手書き文字の問題点
たとえばカタカナの「シ」と「ツ」の違いなどがそうですが、手書き文字の最大の問題点は人によって文字のクセや特徴などがあることです。特に、金額や日付は、間違いが許されない内容です。普段見慣れている字体であれば、経験から判断できることはありますが、判断が難しい場合はダブルチェック、トリプルチェックを行う必要があり、それでもわからない場合は書き手にその内容を確認しなければならないこともあるでしょう。手作業はどんなに注意を払っていてもヒューマンエラーがゼロにはなりません。ゆえに、判断を悩ませる手書き文字は入力業務において大きな課題といえます。
紙の帳票や手書き文字がなくならない理由
データ化が必要とは分かっているものの、紙の帳票やFAXは日常の業務においてなかなかなくならないという現状があります。その理由には、以下の様なものがあります。
今までのやり方が楽で、習慣から抜け出せない
“脱ハンコ”が急ピッチで推し進められているとはいえ、契約書や稟議書など、日本の企業においては未だに押印という商習慣が根強く残っています。そのため、海外に比べるとFAX機の普及率が非常に高く、「紙に書いて送る」という、誰もが簡単に行える習慣から抜け出せない現状があります。
デジタル化に対する苦手意識や費用課題
いざデジタル化に舵を切ろうと考えても、パソコンのキーボードやマウスの操作、スマートフォンのタップなどの入力方法に慣れないといった意見も一定数あります。また、デジタル化を行うためには操作するパソコンやタブレットの準備、専用のシステムやサービスの導入・構築が必要となることも多く、さまざまな費用が発生することも考えられます。このような苦手意識×費用課題も、デジタル化を鈍らせる原因のひとつともいえます。
デジタルへの切り替えで利益や売上を失う懸念がある
仮に自社内でのデジタル化の取組を行えたとしても、商取引をデジタルに切り替えてしまうことで、対応できない取引先とのつながりがなくなってしまうのではないかという懸念や不安も、紙の帳票や手書き文字がなくならない原因のひとつです。従来の方法がやりやすい、慣れているから助かるといった、顧客や取引先の要望を無視し、自社の都合だけでデジタル化を進めると、取引自体が見直され、売上や利益を損失してしまうリスクが発生してしまいます。しかし、いざ切り替えるとデジタルの方がやりやすい・デジタルだからこそ商品やサービスの利用を検討するという可能性も充分に考えられます。将来的な販路や利益の拡大を見据える上でも、顧客や取引先からの協力のもと、業務のデジタル化を段階的に進めてみてはいかがでしょうか。
手書き文字とのこれからの付き合い方はどうすべきか。
紙帳票を全てデジタル化! ――というのはあまり現実的ではありません。まずは段階的に対応を進めていくことが重要です。今後どのように手書き文字と向き合っていくか、ここでは対策や手段をご紹介します。
紙以外のデジタルデバイスを導入する。
手書きが必要とする業務や作業の切り替えは、タブレットや専用デバイスを導入すれば実現できます。専用デバイスを設置してクレジットカードのサインを記入するサービスや、タブレットを設置し、専用アプリへ手書きで記入するサービスは既に存在しています。しかし、専用のアプリを開発する場合は高額な費用がかかる可能性があり、また入力するための機器を揃えるための費用も必要になります。
発注や注文をオンラインで行う。
昨今ではスマートフォンやタブレットの普及も進んでいることから、発注や注文、申し込みなどをアプリや自社のECサイトなどでオンライン化する方法もあります。しかしこの場合でも専用のシステムともなれば開発コストが必要なことや、アプリや自社サイトの利用を促す必要があることを留意しておきましょう。また、急にオンライン化を進めてしまうと顧客やユーザー、取引先が対応できずに静かに離れる恐れもあります。十分な移行期間を設定し、取引先への告知を前もって行う、オンラインやアプリの利用の方が得になる仕組みを取り入れるなど、既存の取引先へのサポート体制を整えることも大切といえます。
手書き文字の認識が得意なAI OCRを導入する
手書き文字を認識できるAI OCRの導入は非常に効果があります。AI OCRを活用すると、取引先の運用をほとんど変えずに、従業員側の負担を大幅に減らすことができます。また、手書き文字の情報をデータ化する工数が減る、処理に要する時間も短縮できるなど「手書き文字や紙の帳票の効率化」に高い効果を発揮します。
手書き文字の認識に強いAI OCRのメリット
AI OCRとは、OCR(光学文字認識)にAI(人工知能)を加えて、文字を高精度で認識し、データ化する技術です。AIの深層学習(ディープラーニング)により「手書き文字」の認識率が高く、学習によって使えば使うほど精度が上がっていくことが大きな長所です。ここでは具体的にどのようなメリットがあるのかを説明していきます。
DX推進の第一歩として紙のデータ化(ペーパーレス化)が可能
申込書の写しやFAXで受け取る発注書・納品書など、紙で送られてきた書類や帳票には手で書かれた文字が多く記載されています。AI OCRであればそんな手書き文字も読み取ることができます。こういった紙をスキャンし、テキスト化することが社内のペーパーレス化の第一歩になります。
今まで通りの紙帳票でも業務に関わる人員やコストは削減できる
取引先や顧客から届いた紙の帳票やFAXを確認し、書かれている情報を手作業で入力し、入力した情報に誤りがないかチェックを行う……といった作業は、AI OCRを活用することで短時間かつ正確に行えるようになります。内容の確認や入力などの業務に要した人手を極力減らすことができるので、残業時間の抑制や空いた時間を他の行に振り分けるなど有効に活用できるようになります。
AI OCRの選定ポイント
最後に、AI OCRを導入する際に注意しておきたいポイントについて解説していきます。
「使いやすいサービス」であるか
各サービス会社が提供しているAI OCRは、現状そこまで大きな精度の差があるとは言い難く、選んだサービスが自社の運用において使いやすいかどうかが第一のポイントでしょう。システム導入後も実務担当者が難なく利用を継続して行うためにも「誰でも簡単に扱える」AI OCRを選ぶ必要があります。一部の業務で試してみて細かな仕様や使い勝手を確認しておくことも大切です。
「他のシステムとの連携が可能」であるか
AI OCRを単体で利用せず、自社システムとの連携が必須な場合、サービス提供会社へ事前に確認しておくことを強くおすすめします。多くのサービス提供会社はRPAやAPIなどによる連携を可能としていますが、導入の前に自社のシステムと連携が可能かどうかを確認しておきましょう。
「セキュリティ面」で安心できるかどうか
安心・安全に、かつ迅速に処理を行えるかという点に注目している企業にとってセキュリティ面は外せない要素となります。サービス適用会社がPマークやISMSなどを取得しているかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
「サポート体制」が整っているかどうか
システムは導入すれば終わりではなく、導入後も問題なく使えることが重要です。利用する中で困った時にしっかりと対応してくれるサポート窓口が設けられているか、運用時のサポートが用意されているかも事前にておきましょう。
「実績」があるか
AI学習によるアウトプットの精度を高めるための指標となるのが、どれだけそのサービスが利用されているかという点です。信頼性を確認する上でも、より多くの利用実績のあるサービスが好ましいともいえます。
以上、手書き文字のデータ化に強いAI OCRの特徴や選び方のポイントについて解説しました。手書き文字のデータ化にお悩みの方は、現状の運用を大きく変えず、顧客や取引先にも負担を強いることなく、手書き文字のデータ化を実現できるAI OCRを検討してみてはいかがでしょうか。当社はFAXと連携したAI OCRサービス「MOVFAX AI」を提供しております。この機会にぜひともお問い合わせください。