昨今の技術の急速な進歩により、今まで紙で行っていた契約行為が、オンラインでも簡単に締結できるようになっています。しかし、最近契約時に「本人確認書類の提出」を求められることが多くなってきていませんか? あるスマホ決済のアプリでは、【本人確認でポイント山分け!】などのテレビCMが放送されるなど、契約における本人確認は最近のトレンドとなっています。手軽にできることがメリットであるオンライン契約なのに、なぜこのような状況になっているのでしょうか。その答えは「犯罪による収益の移転防止にかかわる法律(以下、犯罪収益移転防止法)」への対応です。この記事では「犯罪収益移転防止法」の内容と、それにかかわる本人確認(KYC)の重要性について解説いたします。
目次
犯罪収益移転防止法とは
犯罪収益移転防止法の目的、なりたち
「犯罪収益移転防止法」は、犯罪行為による収益が移転(マネー・ロンダリングなど)して事業活動に用いられることにより、健全な経済活動に悪影響を及ぼすことを防ぐことを目的とし、平成20年3月に施行された法律です。
制度が時代に合わなくなってきていた
施行当初の本人確認は、対面による本人確認書類の提示や写真つきの本人確認書の(写し)の郵送による提出が必要だったため、照合・審査に時間がかかりました。そのため、テクノロジーの進化に伴い浸透していくDXやFinTechなどの浸透が阻害されている状態に。
令和2年にオンライン上で完結する方式が認められ、同時に厳格化
その課題を解決するため、令和2年に「改正犯罪収益移転防止法」が施行されました。これにより、今まで郵送が必要だった「本人確認業務」(KYC/Know Your Customer)がオンラインにも対応しました。しかし、同時に厳格化され、本人確認書類のうち1点と転送不要郵便だったものが、本人確認書類を2点、かつ転送不要郵便が必要になりました。
オンラインで認証を行う「eKYC」
銀行やバーコード決済アプリの登録・契約の際に「免許証を撮影してアップロードしてください」と出たことはありませんか? この仕組は「eKYC」と呼ばれ、いままでアナログで行っていた本人認証をオンライン上で行う仕組みことです。「eKYC」は厳格化された本人確認業務において必須です。その方法については後述いたします。
犯罪収益移転防止法で定義されているもの
本人確認が必要な業種
犯罪収益移転防止法は、主にマネー・ロンダリングへの対策です。そのため、「特定事業者」と設定されている業種は金融機関を中心に49種類。この「特定事業者」は取引を行う際に「取引時確認」として本人確認が必要になっています。一般的に以下の12業種に分けられています。
・金融機関等
・ファイナンスリース事業者
・クレジットカード事業者
・宅地建物取引業者
・宝石・貴金属等取扱事業者
・郵便物受取サービス業者(いわゆる私設私書箱)
・電話受付代行業者
・電話転送サービス事業者(いわゆる電話秘書)
・弁護士・弁護士法人
・司法書士・司法書士法人
・行政書士・行政書士法人
・公認会計士・監査法人
・税理士・税理士法人
※引用元:警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課犯罪収益移転防止対策室「犯罪収益移転防止法の概要(令和3年11月22日時点)」
特定事業者の義務
特定事業者には、以下の義務が課せられているため、契約時に本人確認が必要になります。
・取引時確認
・確認記録の作成・保存(7年間保存)
・取引記録等の作成・保存(7年間保存)
・疑わしい取引の届出(※司法書士等の士業者を除く。)
・コルレス契約締結時の厳格な確認
・外国為替取引に係る通知
・取引時確認等を的確に行うための措置
※引用元:警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課犯罪収益移転防止対策室「犯罪収益移転防止法の概要(令和3年11月22日時点)」
法人契約に必要な「本人確認書類」とは
一般的な「本人確認書類」とは、以下のことを指します。事業者により内容は変わりますので、契約前に検討先へ確認を取りましょう。
法人契約の場合
・登記事項証明書
・印鑑証明書
個人(個人事業主)契約の場合
・運転免許証、運転経歴証明書
・健康保険証、国民保険証
・国民年金手帳
・マイナンバーカード (表面のみ)
・パスポート(住所が表記されているもの)
・住民票・戸籍謄本
・在留カード、特別永住者証明書
・開業届出済証明書
一般的なeKYCの方法
eKYCによる本人確認方法は、以下のようなものがあります。画像の送信はスマートフォンで完結するため、最近急激に増加している手法です。
スマートフォンの写真を使って実施
①顧客等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報
を受信する
②顧客等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報
を受信するとともに、本人確認書類に組み込まれた半導体集積回路(ICチップ)から情報を受ける
引用元:JAFIC「平成30年改正犯罪収益移転防止法施行規則(平成30年11月30日公布)に関する資料」
まとめ
いかがでしょうか。業務のオンライン化が進めば進むほど「安全性」は重要です。ユーザーとして本人確認書類を準備することは面倒と感じる方も多いと思いますが、特定事業者としては法律で定めらた必須要件であり、対応することがユーザーへの安全・安心提供、健全な経済活動に繋がります。当社インターネットFAXサービス「MOVFAX」では、オンラインで本人確認が完結する「eKYC」に対応。他のサービスにも順次対応していきますので、安心してお使いください。
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