スマートフォンや家電、自動車など、様々な機器に浸透してきているAI。AIといえばiOSの「Siri」やAmazonの「Alexa」など、対話型のサービスを思い浮かべる方が多いかと思いますが、業務にもじわじわと進出してきています。今回はその中でも受発注業務のDX推進に欠かせない存在になりつつあるAI OCRの特長と、導入時のポイントについて解説いたします。
OCRとAI OCRの違い
OCR(Optical Character Recognition)は、文字をスキャナやデジタルカメラによって読みとり、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換する技術です。その中でもAI OCRは、AIが自動的に深層学習(ディープラーニング)したパターンから、読み取ったデータが「何であるか」を人間の脳のようにシミュレーションして判断できるOCRのことを指します。
AI OCRの特長
そのAI OCRには、どんな特長があるのでしょうか。
AI OCRは「学習し、精度が上がるOCR」
AI OCRはAIの「機械学習」と「深層学習(ディープラーニング)」の機能が備わっているOCRのことです。このふたつの機能を活用することで、いままで読めなかった手書きの文字も高精度で認識することができるようになっています。AI OCRの学習機能によって修正内容や文字パターンなどのデータが集められ、使えば使うほど対応できる文字の範囲が広がるのです。
フォーマットが異なる帳票にも対応できる
従来型のOCRを使用する際は、事前に読み取る帳票のフォーマットの設計や目印の設定(マークアップ)などが必要で、設定した以外の帳票は読み取れませんでした。しかし、AI OCRはAIが読み取り位置や項目を自動的に抽出。OCR専用の帳票を設計しなくても、従来の帳票をスキャンするだけで設定が完了します。これにより業務効率を大幅に上げることができます。
AI OCRの多くはクラウドサービスとして提供されている
AI OCRの多くは、クラウドサービスとして機能が提供されています。そのため導入にかかる初期コストがオンプレミス型のOCRより安く、ミニマムスタートがしやすいという特長があります。いきなりすべての業務を自動化せず、一部の業務から導入。ランニングコストや必要なオプション等の費用対効果をみてから他の業務への導入を進めていくという方法がとりやすい料金体系といえます。
AI OCRの種類
AI OCRは、大きく分けて3つのタイプがあります。導入を検討している業務の内容に合ったサービスを選びましょう。
定形フォーマット型
定形型は、従来のOCRとは違いマークアップは必要ありませんが、「どこに何が書いてあるのかをあらかじめ設定しておく」設定方法です。書いてある場所や座標を指定しておくことで、高精度な読み取りが実現します。しかし、そのフォーマット以外の帳票の読み取りはできず、帳票が増えるたびに新たに設定が必要になります。
非定型フォーマット型
非定形型は、帳票フォーマットの設定は必要ありません。AIが自動的にどの帳票かを読み取り、自動的に振り分け、読み取りを行えます。一見すると定形フォーマット型より優れているように聞こえますが、事前に複数のフォーマットを読み込ませて修正し、学習させる必要があります。この学習には時間がかかることがあり、精度も学習量に比例します。さらに、学習されていないフォーマットの帳票を読み込んだ場合には精度が著しく落ちることもあります。
業務特化型(非定型フォーマット)
請求書や納品書など、用途が限られる帳票はAI OCRが得意な分野です。まず「請求書」などの文言を読み取り、請求書に関連する文言を帳票内から探し、テキスト化していきます。このタイプはAI OCRの提供会社が事前に学習させてから、提供しているものが非常に便利です。AI OCRを使う業務が決まっている場合は、おすすめです。
AI OCRが活きる活用シーン
このように、帳票や伝票の処理に非常に有効なAI OCR。ここでは、AI OCRの活用シーンをいくつかご紹介します。
単一化できない発注伝票の入力
発注元によってフォーマットや文字の位置が違う帳票や伝票が送られてくることはないでしょうか。通常のOCRではデータ化ができないような内容でも、AI OCRは帳票イメージ全体を読み取り、ゆがみやかすれがあっても正しく認識できます。もちろん学習により使えば使うほどその精度は上がり、帳票や伝票処理の効率はより上がるでしょう。
アンケートや市場調査の処理
アンケートや市場調査の集計にAI OCRは有効です。選択肢式の回答だけであれば、OCRでも問題ありませんが、こういう調査で重要な項目は、自由回答です。この部分を入力するためには手作業が必要ですが、AI OCRであれば、指定の項目を自動的にデータ化し、データとして活用できます。そのデータを集積し、データマイニングツールなどで分析すれば、回答者全体のより深い志向や思考を読み取ることができるでしょう。
申込書や契約書の入力
お客様と取り交わす申込書のデータ化にもAI OCRは役立ちます。紙で取り交わす申込書の多くは手書きで行われることが多く、OCRでの自動取り込みは困難です。しかしAI OCRであれば、その内容をそのままデータ化でき、入力担当者は記入内容と出力結果を確認するだけで処理は完了。顧客の登録にかかる時間が劇的に速くなります
AI OCR選定のポイント
AI OCRは各社様々なサービスが提供されています。サービスを選定する際、どのような観点で選べばいいのでしょうか。そのポイントを解説します。
利用シーンや利用までの期間を明確に
前述の通り、AI OCRは利用シーンによって「定形型」「非定形型」「業務特化型」に分別されています。そのため、まずは導入を検討している業務がどのようなものなのか、いつ始めたいのかなどを明確にすることがサービス選定においては重要といえます。
追加設定や修正作業の操作性
「定形型」を選んだ場合は、誰でも簡単にフォーマットの設定ができるかは非常に重要です。運用前にメーカーに問い合わせ、デモなどで確認しておきましょう。また、AI OCRで読み取ったデータの精度は100%ではありませんので、確認や修正作業は必須です。学習が進めば修正の頻度は下がっていきますが、誰でも操作が簡単にできるという点は選定の際の大きなポイントになるでしょう。メーカーからテスト環境を提供してもらい、事前に試してみましょう。
仕分け機能の有無
読み取る帳票の種類が多いと出力されたデータの仕分けや分類に時間がかかります。せっかく読み取り作業が効率化できても、データの処理に時間がかかると意味がありません。定型フォーマット型のAI OCRを使う場合は問題ありませんが、非定型を利用する場合は帳票の仕分け機能が使うと、テキストを読み込む前に帳票の種類を自動的に認識。指定の方法で振り分けされた状態で出力されます。
FAX OCRは帳票入力作業の自動化に効果的
手書き帳票の多くはFAXで送られてきます。そのFAXの処理は、受信から読み取りまでを自動化できる「FAX OCR」が便利です。最近では、このFAX OCRにもAIを搭載したサービスも登場してきています。FAXOCRは当社でも提供しておりますので、FAXの入力業務にお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
いかがだったでしょうか。ひと昔前までは導入・利用に課題が多かったOCRですが、AIによって活用方法の幅の可能性が大きく広がっています。御社の業務効率の向上に、一度検討してみてはいかがでしょうか。
受信からテキスト化までをクラウドで行える「MOVFAX AI」
当社の「MOVFAX AI」は、取り込んだファイルをAIが認識、高い精度でテキスト化できるAI OCRサービスです。
高い精度で手書き文字を認識
MOVFAX AIは、手書き文字の認識で評価が高い、株式会社Cogent Labs様のAI OCR「tegaki」を活用し、99.2%(※)の高い精度で手書きの帳票をテキスト化できます。
※設定条件により異なります
インターネットFAX「MOVFAX」と連携し自動化できる
MOVFAX AIは、インターネットFAX「MOVFAX」と連携することにより、FAXの受信から振り分け、テキスト化までを自動化できます。担当者は出力結果を確認するだけで作業は完了。最大80%※の業務時間が削減できます。
※当社調べ
定型フォーマットの設定は専任スタッフが担当
定形フォーマットタイプであるMOVFAX AIは、経験豊富なスタッフがお客様に代わって帳票フォーマットの設定・検証を行います。操作に不安がある方でも安心して利用することができます。
ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021受賞製品
MOVFAX AIは、一般社団法人ASP・SaaS・AI・IoT クラウド産業協会(ASPIC)様主催の「 IoT・AI・クラウドアワード2021」において、「AI部門 ASPIC 会長賞」を受賞したサービスです。